腸内フローラ検査のレポートには、日常では使わない言葉が並びます。意味が分からないまま読み飛ばすと、せっかくのアドバイスも行動に移せません。このページでは、検査の申し込みからレポートを読み解くまでに出てくる用語を、分野ごとに整理しています。
定義は、一般に確認できる範囲の説明にとどめています。研究段階で見解が定まっていない用語については、その旨も併記しました。
検査と解析にかかわる用語
腸内フローラ検査
便に含まれる細菌のDNAを解析して、腸内にどのような菌がどれくらいの割合でいるかを推定する検査です。医療機関で提供されるものと、自宅で採便して郵送する検査キットの形式があります。病気を診断するための検査ではありません。
検体・採便
検査に用いるサンプルのことを検体と呼び、腸内フローラ検査では便がこれにあたります。採取量・保存方法・投函までの時間には各サービスが指定を設けており、条件から外れると再提出になることがあります。
16S rRNA解析
細菌が共通して持っている16SリボソームRNA遺伝子のうち、菌の種類によって配列が異なる部分を読み取り、菌の種類を推定する方法です。読み取る範囲を絞るため費用を抑えやすく、自宅向けの検査キットで広く採用されています。判別できる細かさは属レベルが中心です。
アンプリコン解析
目的の遺伝子領域だけをあらかじめ増やしてから読み取る解析方法の総称です。16S rRNA解析はこの手法の代表例にあたります。レポートやサービス説明では、両者がほぼ同じ意味で使われることがあります。
ショットガンメタゲノム解析
領域を絞らず、検体に含まれるDNAを網羅的に読み取る方法です。種や株のレベルまで踏み込んだ推定や、菌がどんな働きに関わる遺伝子を持っているかの推定に用いられます。得られる情報量が多い一方、解析コストは高くなります。
次世代シーケンサー(NGS)
大量のDNA断片の配列を並行して読み取る装置の総称です。腸内細菌のように多数の菌が混ざった検体を短時間で解析できるようになったのは、この技術が普及したことが背景にあります。
相対存在比
検出された配列全体の中で、その菌が占める割合のことです。レポートに並ぶパーセンテージは、ほとんどがこの相対的な割合を指しています。
割合であって、菌の数ではありません
ある菌の割合が下がっていても、その菌が減ったとは限りません。他の菌が増えれば、相対的な割合は下がります。数値の増減は「全体の中での比率が動いた」と読むほうが正確です。
リファレンスデータベース
すでに分かっている細菌の配列情報を集めたデータベースです。読み取った配列をここと照合することで、菌の名前が割り当てられます。使用するデータベースや版が異なると、同じ検体でも菌名の表記や分類が変わることがあります。
腸内細菌にかかわる用語
腸内細菌叢(腸内フローラ)
腸の中に生息している細菌の集まりを指します。花畑(フローラ)にたとえて腸内フローラとも呼ばれます。構成は人によって大きく異なり、同じ人でも食事や体調によって変化します。
常在菌
健康な状態でも体内や体表に普段からいる菌のことです。腸内細菌の多くはこれにあたり、検出されること自体が異常を意味するわけではありません。
分類階層(門・綱・目・科・属・種)
生物を大きなくくりから細かいくくりへ整理する段階のことです。細菌では門がもっとも大きな区分の一つで、そこから綱・目・科・属・種へと細かくなります。レポートで最初に示される大きな円グラフは門レベル、菌の名前が並ぶ表は属レベルであることが多くなっています。
ファーミキューテス門
ヒトの腸内で主要な割合を占める門の一つです。多様な菌が含まれ、酪酸をつくる菌もこの門に多く属します。近年の分類の見直しにより、学術的にはバシロータ門という名称も使われています。
バクテロイデーテス門
ファーミキューテス門と並んで、ヒトの腸内で多くを占める門です。食物繊維の分解に関わる菌が多く含まれます。こちらも分類の見直しにより、バクテロイドータ門という名称が使われることがあります。
ビフィドバクテリウム属(ビフィズス菌)
いわゆるビフィズス菌が属するグループです。乳児期に多く、加齢とともに割合が減る傾向が報告されています。ヨーグルトなどの食品にも使われるため、レポートの中では比較的なじみのある名前として登場します。
ラクトバチルス属(乳酸菌の一群)
乳酸をつくる菌として知られるグループです。近年の分類の見直しで複数の属に再編されたため、レポートによって表記が異なることがあります。なお「乳酸菌」は特定の菌の名前ではなく、乳酸をつくる菌をまとめた呼び方です。
酪酸産生菌
短鎖脂肪酸のひとつである酪酸をつくる菌の総称です。特定の属だけを指す言葉ではなく、複数のグループにまたがります。レポートでは「酪酸をつくる菌の量」といった形でまとめて示されることがあります。
善玉菌・悪玉菌・日和見菌
日本で広く使われている便宜的な三分類です。分かりやすさを優先した整理であり、学術的に厳密な定義があるわけではありません。同じ菌でも、量や周囲の菌の構成によって働きが変わることがあります。
エンテロタイプ
腸内細菌の構成パターンを、いくつかの型に分けて捉える考え方です。優勢な菌の傾向によって分類されます。ただし型の分け方や妥当性については研究者の間でも議論があり、確立した区分として扱われているわけではありません。
ディスバイオシス
腸内細菌のバランスが崩れた状態を指す言葉です。ただし「どこからがディスバイオシスか」を示す明確な数値基準はありません。レポートにこの語が出てきた場合も、状態を説明するための表現として受け取るのが適切です。
指標・数値にかかわる用語
α多様性
ひとつの検体の中に、どれだけ多くの種類の菌が、どれだけ均等にいるかを表す指標です。個人向けのレポートで「多様性」と示されている数値は、通常このα多様性を指します。
β多様性
検体どうしの構成がどれだけ違うかを表す指標です。人と人を比べたり、同じ人の前回と今回を比べたりする場面で使われます。個人向けレポートに登場する頻度はα多様性より低めです。
Shannon指数(シャノン指数)
α多様性を数値化する指標のひとつです。菌の種類の多さと、それぞれの量の偏りの少なさを合わせて1つの値にします。数値が大きいほど、多様で偏りが小さい状態を示します。
種数(リッチネス)と均等度(イーブンネス)
種数は検出された菌の種類の数、均等度はそれぞれの菌の量がどれだけ偏りなく分布しているかを指します。多様性の数値は、この2つの要素から成り立っています。種類が多くても一部の菌に極端に偏っていれば、多様性の値は高くなりません。
パーセンタイル(同世代比較)
集団の中で自分がどのあたりに位置するかを、百分位で表したものです。同年代・同性別と比べた位置づけを示す図で使われます。腸内細菌の構成は個人差が大きいため、数値そのものより位置づけのほうが受け取りやすい情報になります。
リスク表示
研究で報告されている集団レベルの傾向と、自分の腸内細菌の構成を照らし合わせて示される表示です。いま病気があるかどうかを判定したものではなく、将来を予測したものでもありません。
この用語集は診断の材料ではありません
用語の意味を知ることと、自分の体の状態を判断することは別です。気になる症状が続いている場合は、レポートの内容にかかわらず医療機関にご相談ください。
食事・生活にかかわる用語
短鎖脂肪酸
炭素の数が少ない脂肪酸の総称で、酢酸・プロピオン酸・酪酸などが含まれます。大腸で腸内細菌が食物繊維などを分解する過程でつくられます。腸内環境に関する話題で頻繁に登場する言葉です。
食物繊維(水溶性・不溶性)
ヒトの消化酵素では分解されにくい成分の総称です。水に溶ける水溶性と、溶けにくい不溶性に大別されます。腸内細菌が利用する材料になるため、レポートのアドバイス欄で言及されることが多い項目です。
レジスタントスターチ
小腸で消化されにくく、大腸まで届くでんぷんのことです。いも類や豆類、冷やしたごはんなどに含まれるとされ、食物繊維に近い働きをする成分として扱われます。
プレバイオティクス
腸内の特定の菌が利用できる、消化されにくい成分のことです。オリゴ糖や一部の食物繊維が該当します。菌そのものではなく、菌の材料にあたるものを指す言葉です。
プロバイオティクス
適切な量を摂取したときに有用な働きが期待されるとされる、生きた微生物のことです。ヨーグルトや発酵食品、サプリメントに含まれる菌がこれにあたります。プレバイオティクスと混同されやすいので、菌そのものを指す点で区別します。
シンバイオティクス
プロバイオティクス(菌そのもの)とプレバイオティクス(菌の材料)を組み合わせて取り入れる考え方です。食品やサプリメントの説明で使われることがあります。
ポストバイオティクス
微生物がつくり出した代謝産物や、菌の構成成分そのものを指す言葉です。比較的新しい概念で、定義の整理が進んでいる段階にあります。
エクオール
大豆に含まれる成分が、腸内の特定の菌によって変換されてできる物質です。この変換ができる菌を持っている人と持っていない人がいるとされ、検査項目として設けているサービスもあります。
用語を調べたあとに読むページ
用語の意味が分かったら、実際のレポートに戻って読み進めてみてください。どこから見ればいいかは検査結果レポートの読み方ガイドで、検査そのものの選び方は腸内フローラ検査キットの選び方ガイドで扱っています。
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