腸内フローラ検査でいちばん時間がかかるのは、採便でも郵送でもなく、数週間後に届いたレポートを読み解くところです。グラフと専門用語が並んだ画面を前にして、「何が良くて何が悪いのか分からない」まま閉じてしまう人は少なくありません。
このガイドでは、レポートを開いてから生活に落とし込むまでを、見る順番に沿って整理します。サービスごとにデザインは違っても、載っている要素と読み方の考え方はおおむね共通しています。
レポートを開いたら、最初に見る3か所
情報量が多いレポートほど、どこから読むかで理解のしやすさが変わります。細かい菌の名前から入ると迷子になりやすいので、大きい枠から順に見ていきます。
全体の構成比グラフ
円グラフや帯グラフで、菌のグループごとの割合が示されている部分です。まずここで、極端に大きい区分や、ほとんど見えない区分がないかを確認します。数値を覚える必要はありません。「大きく偏っているところがあるか、ないか」だけを見ます。
多様性の指標
「多様性スコア」「菌の種類の数」といった名前で示されている数値です。腸内にどれだけ幅広い種類の菌がいるかを表しています。ここは次の章で詳しく扱いますが、この段階では自分の値が示されている位置だけ確認しておけば十分です。
同世代・同性別との比較
多くのレポートには、同じ年代・性別の集団の中で自分がどのあたりに位置するかを示す図が入っています。腸内細菌の構成には個人差が大きいため、単独の数値より「集団の中での位置」のほうが受け取りやすい情報です。
最初の3か所だけで十分
全体のバランス、多様性、同世代との位置。この3つを見たら、いったん読むのを止めて構いません。細かい菌の名前は、気になる項目が出てきてから調べれば間に合います。
「多様性」という数値が指しているもの
種類の多さが注目される理由
多様性は、腸内にどれだけ多くの種類の菌が、どれだけ均等にいるかを数値化したものです。ひとつの個体の中での多様さをα多様性、人と人との構成の違いをβ多様性と呼び分けます。個人向けのレポートで示されるのは、通常このうちのα多様性です。
種類が多いほうが注目されるのは、特定の菌に偏った状態より、環境の変化に対応しやすいと考えられているためです。食事の内容が変わったり、体調を崩したりしたときに、担い手が複数いるほうが働きが途切れにくい、という考え方です。
高ければ良いと言い切れない理由
ただし、多様性の数値が高ければ健康、低ければ不健康、と単純に結びつけられるものではありません。適切とされる範囲は年齢や食生活、地域によっても変わり、研究でもまだ検討が続いている領域です。
数値そのものを目標にするより、「前回より下がった/上がった」という変化のほうが読み取りやすい情報です。1回目の検査では、あくまで基準点を取ったという受け止め方で構いません。
菌の名前と分類に振り回されないために
門・属・種という階層
細菌の分類には段階があり、大きいくくりから順に門・綱・目・科・属・種と細かくなっていきます。レポートで最初に出てくる大きな区分は門レベルで、腸内では ファーミキューテス門・バクテロイデーテス門 といった名前がよく登場します(近年は学術的に別の名称で表記されることもあります)。
その下の属レベルになると、ビフィドバクテリウム属(いわゆるビフィズス菌)やラクトバチルス属といった、耳にしたことのある名前が出てきます。自宅向けの検査キットで示されるのは、多くの場合この属レベルまでです。
「善玉菌・悪玉菌」というまとめ方の限界
善玉菌・悪玉菌・日和見菌という三分類は日本で広く使われていますが、学術的に厳密な定義があるわけではありません。同じ菌でも、量や周囲の菌の構成によって働きが変わることがあるためです。
レポートにこの分類が使われている場合は、読者に伝わりやすくするための整理だと考えて、「悪玉菌が多い=体に悪い状態」と即断しないほうが実態に近くなります。
短鎖脂肪酸に関する項目
短鎖脂肪酸は、腸内細菌が食物繊維などを分解する過程でつくられる物質で、酢酸・プロピオン酸・酪酸などが含まれます。レポートでは、これらをつくる菌がどれくらいいるかという形で示されることがあります。
この項目が低めに出た場合、多くのレポートは食物繊維の摂取に関するアドバイスを添えてきます。実行のしやすさから言えば、まず取り組みやすい部分ではあります。
「判定」と「診断」を分けて読む
リスク表示の意味
レポートに特定の疾患名や「リスク」という言葉が出てくることがあります。これは、研究で報告されている集団レベルの傾向と、自分の腸内細菌の構成を照らし合わせた結果です。いま自分の体に病気があるかどうかを判定したものではありません。
言い換えると、示されているのは「似た傾向の人の集団で、こういう報告がある」という情報であって、個人に対する予測ではありません。数値が高く出ていても、それだけで受診が必要になるわけではなく、逆に低く出ていても症状があれば受診が必要です。
症状の有無で判断する
レポートの表示ではなく、実際の体調で受診を判断してください。腹痛・下痢・便秘・血便・体重減少などが続いている場合は、検査結果の内容にかかわらず医療機関にご相談ください。
医療機関に持っていくときの伝え方
検査結果を医療機関に持参すること自体に問題はありませんが、この検査は診療の判断に使うことを前提としたものではないため、そのまま診断材料になるとは限りません。持参する場合は、レポートの数値を説明するより、実際に困っている症状といつからかを先に伝えたほうが話が早く進みます。
結果を生活に落とし込む手順
変える習慣を1つだけ決める
レポートのアドバイス欄には、食事・運動・睡眠にわたって複数の提案が並んでいることが多くあります。全部に手をつけると、何が効いたのか分からなくなります。次の検査までに変えるのは1つ、多くても2つに絞るほうが、結果を読み取れる形になります。
- 朝食に発酵食品を1品足す
- 主食の一部を精製度の低いものに置き換える
- 野菜・豆・海藻のうち、いま最も少ないものを1つ増やす
- 就寝時刻を一定にする
いずれも続けられることが前提です。数週間で戻ってしまう内容を選ぶと、再検査の比較材料になりません。
サプリメントを足す前に確認すること
結果に応じてサプリメントが提案されることもあります。取り入れるかどうかは個人の判断ですが、先に食事側で変えられる余地があるかを見ておくと、何が影響したのかを切り分けやすくなります。
また、治療中の病気がある場合や薬を服用している場合は、新しく何かを継続的に摂り始める前に、かかりつけの医療機関に相談してください。
再検査は条件をそろえて受ける
比べることが目的なら、同じサービス・同じ解析手法で受けるのが基本です。解析手法が違うと数値の出方も変わるため、別のサービスに乗り換えて比較しても、変化なのか手法の差なのか判断できません。
間隔は、変えた習慣が定着してからにします。数日から1〜2週間で測り直しても、日々の変動に埋もれてしまいます。生活を変えて数か月ほど続けたタイミングを目安にすると、変化を読み取りやすくなります。
まとめ
レポートは、全体のバランス・多様性・同世代との位置の3か所から読み始めます。細かい菌の名前や分類は、気になる項目が出てきてから調べれば足ります。そして、リスクの表示は集団の傾向を示したものであって、自分の体の診断ではありません。
最後に残るのは、変える習慣を1つ決めて、しばらく続けてから同じ条件でもう一度測る、という運用の部分です。ここまでできて、検査にかけた費用が判断材料に変わります。
レポートに出てくる用語は腸内フローラ検査の用語集に、検査そのものの選び方は腸内フローラ検査キットの選び方ガイドにまとめています。
よくある質問
- 多様性の数値が低いと、問題があるということですか?
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低いこと自体が問題を意味するわけではありません。適切とされる範囲は年齢や食生活によっても変わり、研究でも検討が続いている領域です。1回の数値を評価するより、生活を変えたあとにどう動いたかを見るほうが実用的です。
- 善玉菌が少ないと書かれていました。すぐにサプリメントを飲んだほうがいいですか?
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急いで判断する必要はありません。まず食事側で変えられる余地があるかを見ておくと、何が影響したのかを切り分けやすくなります。治療中の病気がある場合や服薬中の場合は、新しく継続的に摂り始める前にかかりつけの医療機関にご相談ください。
- 結果を病院に持っていく意味はありますか?
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持参すること自体に問題はありませんが、この検査は診療の判断に使うことを前提としたものではないため、そのまま診断材料になるとは限りません。受診する場合は、レポートの数値より、実際の症状といつから続いているかを先に伝えてください。
- 前回と結果が大きく違いました。どちらが正しいのですか?
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どちらも、その時点の状態としては正しい結果です。腸内細菌の構成は食事・睡眠・服薬・体調によって変わるため、時期が違えば数値も変わります。比べる場合は、同じサービス・同じ解析手法で、生活を変えて一定期間が経ったあとに受けると読み取りやすくなります。
